『一冊の本に想いを込めて』〜本を愛するキモチを共感体験〜

縁活初日の夜18時30分よりスタートしました、あべのビブリオバトルの様子をレポートします。会場は近鉄阿倍野店9階のこもれびの広場。3層吹き抜けの開放的な空間でバトラー同士の熱い戦いが繰り広げられました。

ビブリオバトルとは複数のバトラーと呼ばれる紹介者が、自分のおすすめする書籍を5分で聴講者に紹介し、聴講者に最も「その本を読んでみたい!」と支持を得られたチャンプ本を決定するという戦いです。 「本と人との出会い」という『縁』を提供するイベントになるだろうと、司会である天満橋ビブリオバトル実行委員会の吉野さんは語っていました。この戦い、バトラー自身が紹介する本の内容を深く理解し、その魅力を聴講者に訴えかけなければ支持は得られません。 本を通じて人を知り、人を通じて本を知る。 本を愛するキモチの共感ができるかが勝敗の重要なポイントです。

ビブリオバトル01

イベントでは参加者全員への導入として、「読書は■で楽しむもの」の■の部分に入るものは何かというクイズが出されました。「読書は心で楽しむもの」「読書は理解で楽しむもの」といった深〜いと思わせるものや、「読書は読んで楽しむもの」といった『そらそうや!』と笑いのこぼれる珍解答も。もちろん、どの回答も正解です。しかし、吉野さんは「読書は1人で楽しむもの」という言葉を参加者に投げかけ、「多くは読書は1人で楽しむもの。しかし、本を読んで感じた楽しみをみんなに伝えることで、共感が広がるのではないか」と、ご自身の思いを語っていました。

今回のは吉野さんも含めた5名のバトラーでチャンプ本の決定が争われることになりました。制限時間の5分をいかに上手に使いきれるかが重要であり、残り1分を切った際の挑戦者の焦り具合も見所です。

1人目の挑戦者は、元文具メーカー会社員の男性。紹介された本は、田端信太郎氏著書「MEDIA MAKERS」です。元々、Chris Andersonの「MAKERS」が気になっていたときに、「似たタイトルだな」と思ったのがこの本を手に取ったきっかけだったとか。現在は、TwitterやSNSなどITテクノロジーの発展により、誰もが広く影響力を持つことが出来る時代になっています。そんな時代における『メディア』とは何かをこの本では考察しています。発表者の男性は、この本を読むことで自らも情報を発信する側になり、人に影響を与える仕事をしていきたいと熱い想いを語っていました。

2人目の挑戦者は、不動産賃貸の仕事をされている男性、紹介された本は、藤田和日郎氏著書「邪眼は月輪に飛ぶ」です。 ”うしおととら”、”からくりサーカス”などで有名な藤田和日郎氏の作品。今回のバトラーの中で唯一マンガを紹介されていました。しかし、その内容は深淵(しんえん)の一言。ミネルヴァと呼ばれるフクロウの、他者との関係性への葛藤を背景にストーリが展開されていくことを熱く語っていました。不動産賃貸という職業上、人とのコミュニケーションが試される機会が多い為、自身を投影する部分も多く、共感ができると語っていました。

3人目の挑戦者は、大学教員の仕事をされている男性。紹介された本は、佐藤オオキ氏著書「ネンドノカンド」です。男性は、今までのメーカー勤務からデザイン関係の仕事に転職されたため、「デザインとは何ぞや?」という疑問のためにこの本を読まれたそうです。数あるデザイン関連の本の中からこの本を選んだ理由として、佐藤オオキ氏のデザインは決まった特徴がなく、何に影響を受けたのかというのが疑問に思ったそうです。この本の中では、著者のお腹のユルさから来る体験からトイレ関連の製品にアイデアを活かしていったり、ドラえもんの道具からインスパイアを受けたエピソードなど、読んでいてクスッとくる話が満載だと紹介していました。

4人目の挑戦者は、社会学を学ぶ大学生の女性。今回のバトラーの中で紅一点。紹介された本は、ナガオカケンメイ氏著書「ナガオカケンメイの考え」です。人とモノの関わり方やつながりを普段考えていることから、著名なナガオカケンメイ氏のデザインに対する考え方を学びたいと思い、この本を手に取ったそうです。その中で語られている、人とモノとの関わり方や仕組みづくりにより、人が長くモノと付き合えるロングライフデザインという考えに共感したそうです。デザインは人とモノとの『縁』を考えることなのだと理解し、悩みが解決できたと語っていました。

最後の挑戦者は、司会の吉野さん。紹介された本は、冨山和彦氏著書「結果を出すリーダーはみな非情である」の紹介です。この本では、日本のビジネスマンは勉強が全然足らず、経営者的観点で物事を判断出来る課長や部長などのミドルリーダーが全然足らないということを強く訴えているそうです。その他にもコミュニケーションとは論理性だけでなく、情に訴えることが重要などリアルな現場の話が赤裸々に綴られた内容が多く、実際に仕事をしていてウンウンと頷く点が数多く盛り込まれていて共感点が多かったと語っていました。

このように計5名のバトラーがそれぞれのおすすめ本を紹介したあと、聴講者によるチャンプ本のへの投票が行われました。結果は、9票・7票…と票が分かれる中、計10票を獲得した佐藤オオキ氏著書「ネンドノカンド」がチャンプ本として決定しました。優勝者の大学教員の男性には優勝ベルトや特製のしおりが贈られ、参加者全員からの拍手の中でビブリオバトルは終了となりました。

ビブリオバトル02

ビブリオバトルの聴講者にインタビューを行いますと、「面白いですね、紹介された本を読んでみたくなりました」
「紹介された本の内容部分から、身につけたかったキーワードがあり、読んでみて自らに落とし込みたい」といった感想があり、
バトラーが本に共感した部分がしっかりと伝わっていった点に、ビブリオバトルの将来性を感じました。司会の吉野さんの今後の目標としては、日本一の高さのあべのハルカスの1番高い所で、日本一のビブリオバトルを行うことだそうです。そんな目標も、すぐに実現することを予感させる盛況なイベントでした。

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